
1953年に製作された蟹工船が、昨年11月にDVDで発売された。以前に16ミリフイルムで見たが、雨が降っていて不鮮明であった。これはよさそうなフィルム原盤を使ったのか、時代物ではあるがそれなりに良かった。小林多喜二の原作と比べるとかなり違うところがある。ラストの展開では、映画はドラマチックになっているが、原作のほうが発展性のある画き方であると思ったりした。映画の中で「1万箱祝い」のシーンで上映された映画も違う。原作で多喜二は「西洋物はアメリカ映画で『西部開発史』を取り扱ったもので」と内容を説明しているが題名は書いていない。多喜二が用いた映画は「アイアン・ホース(THE IRON HORSE)」で、ジョンフォード監督の出世作となったアメリカ大陸横断鉄道建設の壮大な西部劇だ。1924年の作品で約2時間のサイレント(無声映画)である。「蟹工船」の発表は1929年であるが、多喜二はこの映画を実際に観ていたのであろう。映画評論家の淀川長治氏はDVD「アイアン・ホース」の解説で「この工事の働き手はいなく、中国人や日本人が雇われた。実際に働いた人に聞いた話だが『死んだ人を野原にほっぽりだしたまま仕事を続けた』というほどで、労働者の苦しい話を映画にしたものだ」(要旨)と語っている。「アイアン・ホース」に描かれた時代は「蟹工船」より約60年前である。
なお、新日本出版社1968年刊の「定本小林多喜二全集第4巻」には、当時発見されたばかりの「蟹工船」の自筆原稿の写真が載っている。
☆写真はDVDのカバー(販売元:北星)
posted by Jimmy at 15:55|
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